夜だった。
別に特別なことは何もなかった。
カレーを食べて、風呂に入って、テレビはつけっぱなし。
嫁はソファに座ってスマホをいじっていた。
俺は水を飲んでいた。
そしたら見えた。
嫁の足元。
右足だけ、ふわふわの靴下を履いていた。
左足は、裸だった。
「あれ?」と思った。
「左右ちがうじゃん」と思った。
「なんか…エロくね?」とも思った。
最初は軽い違和感だった。
でも5秒後には、何かがざわついていた。
右はもこもこ。
左は無防備。
しかもこっち向いてるのは左。
あまりにも無防備すぎて、こっちの理性が刺された。
嫁は何も知らずにアイスを食っている。
その姿を見ながら、俺は一人で勝手に負けていった。
足の指、かかとの丸み、ちょっとだけ乾燥した肌の質感。
「これは…広告よりも強い」
と、心のどこかで思った。
ほんの一瞬、「我慢しようかな」と思った。
でも、残高がふと頭に浮かんだ。
銀行アプリを開いたばかりだった。
数字が少なすぎて、もはや通知も来ない。
口座があるのに存在を無視されている。
クレカの請求は来るのに、入金は来ない。
バナーは貼ってるのに、誰も踏まない。
──そう。俺は、金がない。
現実はピクリとも動かない。
でも嫁の足だけが、ちょっとずつ動く。
そのたびに、こっちの息が荒くなる。呼吸が重なる。
これはもう、勝てない。
靴下1枚で、人はこんなに負けられるのか。
金もない、我慢もない、未来も不安。
でも欲望だけがある。すごくある。やたらある。
「ここで我慢できたら、俺は何か変われるかもしれない」
そう思った。浅はかにも思った。
でも、足が、指が、かかとが、
「ほら、どうした? 来いよ」と誘ってくる(ような気がした)。
これは戦いじゃない。これはもう支配だ。
気づけば近づいていた。
膝立ちで、嫁の足元に。
左足の指にそっと触れた。
それだけで心が崩れた。
そのまま、全部いった。
詳細は伏せるけど、すごく良かった。
右の靴下は最後まで脱がなかった。逆に感謝した。神棚に飾りたい。
終わったあと、虚無が来た。
現実が、押し寄せた。
口座残高は変わらない。
収益も増えてない。
SNSも伸びてない。
ただ、ムラムラに負けて、時間が消えた。
でも、満たされた。そこは否定できない。
俺は毎回こうだ。
性欲には勝てない。金にも勝てない。
でも「金がほしい」という気持ちだけはなぜか残る。
焼け跡に立って、「いつか稼ごう」と思ってる。意味わからんけど。
🟩締め(静かすぎる決意)
俺はムラムラに負けた。
また金も稼げなかった。
バナーも踏まれていない。
アドセンスは静かに眠ってる。
でも、まだ諦めてない。
欲望まみれでも、俺は稼ぐ男になるつもりだ。
ムラムラを燃料にして、現金に変えてやる。
いつか、片足だけ靴下を見るたびに、
「これで〇万円稼いだ」と言えるようになりたい。


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